「プラネタリウムというものを知っているか?」
 隣を歩く金髪の義弟に話しかけられ、ジョナサンは小首を傾げる。
「ええと……惑星運行儀のこと? オランダにひとつ、部屋をまるごと占める大がかりな装置があるね」
「おまえが連想したのはオーラリー、つまり月や惑星の小型模型が歯車じかけで軸に沿って回転する装置だろう。それも『プラネタリウム』だが、20世紀においては違う」
 DIOは優雅な手つきで両腕を広げた。ドーム状の形を再現してみせる。
「光学式のプラネタリウムだ。暗くて広い空間を用意する。中央に球形の機械が置かれ、中にはわれわれの時代の白熱球やアーク灯よりも遥かに強い光源が入っている。球形には星の配置を模した穴が開けられているから、光を透かすと、天井にさながら本物のような星空が映しだされる」
 説明を受けて想像図を脳内に描くジョナサンの顔に、みるみる好奇心の彩りが躍った。すごい、斬新な発想だ、誰が考えたの、そういった質問責めを浴びせかける寸前にある疑問に気づいて眉を寄せる。
「……面白そうではあるけど」
 血族を示す翠緑の瞳がつと上に向けられた。冬のカイロ旧市街、人の子の歩かぬ夜半、喧騒から忘れられ都市の空隙に埋没しているさびれた路地。
 白茶けた壁とごみごみした所帯くささが夜の底で眠りこけている。見上げる空は建物に挟まれて窮屈そうだが、漆黒に金砂を撒く光のまたたきが美しい。
「せっかく星の綺麗な夜なのに、なぜわざわざ造りものの天体の話を?」
「知ってるくせに、ジョジョ、わたしはおまえの好きなものを台無しにするのが好きなのさ」
 口を曲げて黙りこむ横顔に視線をやり、吸血鬼は満足げに口角を上げた。


 だが、ジョナサンは悔しさに黙りこんだわけではなかったらしい。
「別にその発明は本物の星を台無しになんかしてないよ。偉大な発明に対して失礼な感想を持つものじゃあない。だってその装置があれば、夜遅くまで起きられない子供たちも天体について学ぶことができるんだろ?」
 快活さの中に気品と重厚を溶かした声が、ふふ、と笑って続ける。
「それにきっと人生の後押しもしてくれる。星空は恋人たちの味方だ」
「どういう意味だ」
「例えばぼくが満天の星空の下でエリナにプロポーズしたかったとする。その日から生憎の雨が続いて、決心が揺らぎそうになってしまっても、20世紀ならいつでも科学が味方してくれるというわけさ」
「それはそれで科学に失礼じゃあないのか」
 心底どうでもよさそうにDIOが返した。返事の中身は予測の範囲内だったが、応じる声そのものにジョナサンはわずかな違和感をおぼえる。少し聞こえ方が違う気が――ああ、そうか。声の聞こえる場所が想定より何インチか高い。今のかれはぼくと同じ身長だから。
 比喩ではなく自分とまったく同体をもつ義弟は、ジョナサンの常識から言わせてもらえれば奇矯な格好をしていた。デコラティブで扇情的で……芝居の扮装? それとも曲馬団の道化? 呆れるしかなかったが、一番呆れるのはその格好が、かれの流麗な髪と凄艶な容貌には謎めいた似合い方をしている事実だろう。
「あまり頭の悪そうな発言をするな。おまえをただひとり尊敬する相手と決めたわたしの立つ瀬がなくなる」
「ぼくがいま挙げた、『プラネタリウム』の2つの使用目的が間違っているとでも?」
「……おおむね間違っていないところが腹が立つな」
 くつくつ笑ってジョナサンは石畳を踏んだ。足音はしない。DIOの靴だけがこつり、こつりと乾いた大気に歩を鳴らす。ジョナサンは大西洋で船が沈む直前の格好、妻と夕食の卓についていたときの服装だ。長躯をつつむ上等なドレスシャツ、足には仕立てのよいカーフブーツ。だが、足音はしない。
「きみがカイロにいるとは思わなかった。しょっちゅう遊び歩いてるの?」
「間抜けめ、なんでも遊びと直結させて考えるな。居を構えているのに周辺環境も押さえないのは愚かしいだろう。市街を歩くのは地の利を掴むためだ。少なくともカイロとその周辺には詳しくなった」
「……じゃ、じゃあさ」
 平静さを装った問いかけを先んじてきっぱりと撥ねつける。
「ギザのピラミッドなら行ってないぞ」
「それなら、」
「テーベ遺跡も行ってないし、アレクサンドリアの灯台跡地も行ってない」
「…………」
「ちなみに配下を求めて新大陸に渡ったこともあるが、北米のみで南米には行ってない。アステカもマヤもインカも知ったことじゃあない」
「なぜそんなもったいない真似ができるんだ!」
「おまえの子孫を殺したいんで忙しいんだよ、ジョジョ。――ああ、でもそういえば」
 猫科の獣めいた琥珀の瞳が動き、黒髪の男をからかう色で映す。
「エジプト考古学博物館なら行ったが?」
 今度こそ身を乗り出したジョナサンを窺い、DIOは思わせぶりに続けた。
「トゥト・アンク・アメンやラムセス2世に用はないが、倉庫に用があった。未分類の収蔵品に、わたしの配下となりうるスタンド使いがいると部下の占いの卦で出たのでな」
「博物館の倉庫に?」
「人ではなく器物だ。名匠が精魂をこめた逸品にスタンドが宿ったらしい。巧緻な細工の古い刀で、見るものが見れば時代的特徴を読みとれただろう。己の境遇を憂いていたので連れ出して配下に加えてやった」
「今はどこにあるの?」
 興味の色に湧く視線を受け流し、DIOは飄々と言い放つ。
「刺客として送り出した結果、おまえの玄孫と戦って完膚なきまでにぶち壊された。柄も刃もこなごなで修復不可能のごみ屑、辛うじて残った刃先もいまや川底で錆のかたまりだ」
「…………さすがぼくの子孫だ、きみの手下なんかより強い!」
「失意に震える拳はせめて隠してから言うといい」
 歌うような調子で指摘してやる。ぼくの玄孫は悪くないぞ、けしかけたきみが悪い、ああ、くそ、史料ひとつで得られる情報がどんなに重要か……悲嘆して頭を抱える表情をDIOは心ゆくまで堪能する。この顔を特等席で眺めるのは自分の特権だ。落ちこめ、苛つけ、敗北感に悶えろ、あの日のように。
「せっかくエジプトにいるのに、よくそんな惜しい真似ができるなあ」
 凛々しい額を曇らせてジョナサンが溜息をついた。同季節のイングランドに比べれば格段に暖かいが、それでも10℃を切る1月の夜気なのに、息は白くならない。
「この悠久の地に立ちながら何も感じるところはないわけ?」
「考古学者のおまえはご執心だが、ここ『ナイルの賜物』は、どうやらわが祖国とたいそう仲が悪いらしいぞ?」
「ん……まあ、宗主国と保護国のあいだに摩擦が生じるのは珍しくない」
 ジョナサンは慎重に言葉を選んだが、そうではないとDIOは頭を振った。
「20世紀のエジプトはもうイングランドから独立している。だがせっかく独立したのに、エジプトで発見された数々の出土品を、大英博物館がごっそり抱えこんだままなのが気に食わんそうだ。盗人ども、祖先の財産を返せ、それはエジプトにあるべきだとな」
「あー……」
「昔、ふたりで大英博物館にエルギン・マーブルを観にいったことがあるな――わたしは面倒だと言ったのに、おまえに一方的に連れまわされて閉口したさ――あれはギリシャのものだが、既にギリシャ政府から返還要求が出ている。早晩エジプトも正式に要求してくるだろうよ」
「……彼らの言い分はもっともだ。しかし、それらの歴史的資産に早くから価値を認め、厳重に保管できた国はイングランド以外にあったろうか? 少なくとも当時のエジプトは、文化財の保護環境が整っているとは言えなかったはず」
 俯きがちにジョナサンが異を唱える。眼を伏せているのは、持論にまだ確信がもてず迷いがあるからだ。
「大英博物館にあれば安全に管理され、場所の知名度もあって多くの人に閲覧され、歴史の息吹を間近に感じてもらえる。そういった環境を子々孫々のために整えるのも人間のつとめではないだろうか」
「ご高説をどうも、ジョジョ。兎を追って穴におっこちそうなほど好奇心旺盛な義兄さんに、もうひとつ面白い話をしてやろう」
 性悪な微笑を唇に浮かべ、白い牙をうすく覗かせる。
「聞くところによれば、『Alice's Adventures in Wonderland』の前身である『Alice's Adventures under Ground』の手稿本が、しばらくイングランドから失われていた時代があるそうだ。アメリカの好事家が金にものをいわせて購入したとかでな」
「えっ」
 祖国の名著と同じ世紀を生きた男が思わず絶句する。
「だがご安心あれ、ジョナサン・ジョースター。20年後の話になるが、なんと彼らはそれをイングランドに返還してくれた。『これは英国にあるべき財産だから』というご立派な理由でだ。米国人にできた紳士的行為を、紳士たるおまえが容れられないとでも?」
 ううむ、と唸ってジョナサンが腕を組んだ。眉間の皺がくっきり苦悩を刻んでいる。引き締まった肩をしおらしく落とす相手を見て、DIOはうきうきと愉悦にひたる。ああ、たのしい、愉しい。何年経ってもジョジョを言い負かすのは愉しい。今はもう動いていない心臓が高鳴るようだ。
「……悩ましい問題だなァ? 考古学専攻くん」
「……きみはどう思う? 法律学専攻くん」
「国際法は専門外だ。ただまあ、個人の所感を述べるならわたしは祖国に賛同するね」
 DIOは首に手をやり、黒いインナーの襟元をぐっと引き下げて癒えきらぬ傷跡を誇示してみせた。瞳を細めて妖しいまでの驕慢さで嗤う。
「価値ある資本は、頼りない持ち主に任せておくより、それを最大限活用できるものが奪って役立てればよい。そう思わないか?」
「不思議だな、俄然、エジプトの味方をしたくなってきた」
 苦みの成分がだいぶ多い苦笑とともにジョナサンが返した。
 ふたりは暫し無言で連れだって歩む。煤けた路面のあちこちには、露天商が出しっぱなしにしている器材やテント類が積まれている。カーフブーツの足や、先端の尖った靴を履いた足がそれを避けて歩くたび、同じ高さに並んでいるふたつの肩は少し重なる。ぶつかりはせず、ぶれた映像のように二重に。
「きみは相変わらずぼくへの嫌がらせに心血を注いでるんだなあ」
「いつまでも馴染まないおまえの肉体が悪い。そろそろ諦めて支配されろ」
「同意のない略奪を経ておきながら『自分ではなく相手が悪い』と断言できる図太さには感心するしかないよ、ディオ」
「厭味が達者になったじゃあないか、ジョジョ」
 ふんと鼻を鳴らしてDIOが胸を反らす。
「勝手に囀っていろ。からかって遊ぶ程度ならしてやるが、わたしは本来、おまえの言葉になぞ真面目に耳を貸す気はない」
「きみは最終的にはぼくを認めてくれたと思ってたんだけど、あれは勘違いだったわけ?」
 さすがに拗ねてジョナサンが口を尖らせる。
「……それとは関係ない。わたし自身の問題だ」
 切り上げ口調、としてしまうにはDIOの声には翳りが強すぎた。どういう意味かと問うつもりで向けられた翠緑の瞳を見返そうともしない。ああ、とジョナサンは気づく――7年間のあいだ、この表情は何度か見た。
 白い頬は彫像めいた曲線で無感情を保っている。でも、髪よりは濃い色をした睫毛だけがあえかに震えているのだ。

「なぜなら今、わたしの隣を歩いているジョナサン・ジョースターは、幻覚、錯覚、誤認識、知覚のエラー、そのいずれか、あるいはそのすべてだからだ。正体のない虚像でしかないからだ。まともに相手をするほうが頭がおかしい」

「…………きみの中では、そういうことになってるのか」
「夜道を歩いていたら突然、わあ、星が綺麗だ、などと呑気な声がして、振り返れば100年前に殺したはずの男が微笑みかけてくる。これが幻覚でなくてなんだ? プラネタリウムの話で機先を制するくらいしか対応しようがない」
「ぼくは幽霊じゃあないの?」
「幽霊はいない」
 気負いなく淡白に断言する。
「われわれの時代に心霊主義が流行ったな。霊魂の存在を科学で証明する試みだ。20世紀になってほぼ否定されている。彷徨える魂は存在せず、冥府の国もない。天国や地獄はあくまで抽象的なツール、精神の到達点を比喩しているにすぎない」
「……だからぼくはただの幻覚、ただの妄想、赤の王のみている夢ってわけか。眼を醒ましたらぱちんと消えてしまうだけの」
 曖昧な面持ちでジョナサンが頭を掻いた。
「正直な話、ぼくも現在の自分をどう位置づけていいのか解らない。ぼくはきみに気管を貫かれたはずの死人で、この肉体も実体ではない。でもぼくは自らの意思で語り、自らの意志で歩いている。ぼくにしてみれば、100年後の未来を生きている義理の弟のほうが夢みたいな存在だ。……きみのほうこそ、船倉に横たわるぼくが、死の間際にみている夢じゃあないのか? それともこれもスタンドとやらの影響?」
「おまえがわたしの幻覚にすぎないと判断した理由のひとつは、スタンドの存在を知っていることだ。おまえは知らないはずだ」
「文脈で察しただけだよ。いまこの瞬間にも、元来ぼくのものであるきみの肉体に未知の力が漲っているのは感じとれる。きみがさっき『スタンド使い』という語を使ったから、この力はスタンドと呼ばれているのかと把握したのさ」
 なるほど、この洞察力はジョジョのものだなとDIOは考える。口に出して聞かせてやりたい思考ではないが。
「OK、OK、では仮におまえがほんものの幽霊であるとしよう。なぜ仇であるわたしを殺そうとしない?」
「方法さえ解ればすぐにも取りかかるんだけどねえ」
 好みのタルトが菓子店にないのを残念がるくらいの調子でさらりと返す。
「きみがぼくの子孫に刺客を放ったと言う。ぼくとしては子孫を傷つけられたくない。しかしそうなるに至った経緯がまだ解らないし、子孫たちが擁護されてしかるべき善人だという確証もない……と考えると、如何にきみの邪悪さを知るぼくでも一方的な介入は気がひける。もっとも、個人的な恨みだけでもきみを殺すには十分だから、触れられない相手を散滅させる方法を鋭意検討中だけど、進展は芳しくない」
「それはそれは、確かに同情すべき難題だな」
 呆れと忌々しさをないまぜにした声でDIOが独りごちた。
「おまえがわたしの夢か、わたしがおまえの夢か、さて、それが問題だ」
「ハムレットならきみはクローディアス役だけどね。……この場合、きみにとって信じ難いぼくの秘密なんかを告白してみせたら、脳内だけで拵えた幻覚ではないと証明できるだろうか」
「例えば? 7年も一緒にいたんだ、お互い手の内は知れている」
「そうだなあ、ずっと言えなかったけどディオ、ぼくは実はきみを愛している」
「たいして意外じゃあないな。おまえの言いそうなことだ」
 DIOは歩む速度すら緩めようとしない。
「おまえは目に映るすべてを愛さずにはいられなかった。そういう男だ。父親も飼い犬もエリナ・ペンドルトンも、スピードワゴンもウィル・A・ツェペリも」
 自らの列挙した名前の響きが、じり、と胃の腑を焦がす感覚をおぼえた。強引にそれを無視して続ける。
「おまえは一種の異常者だ、ジョジョ。愛することでしかものごとを解決できない。それは実は、ひとを殴ることでしかものごとを解決できないのと同義だ。誰に対しても等しい手を押しつける点で同義だ。ケースバイケースに対応できないのは、個々を見ていないのと同じだ。おまえの前ではすべてが愛のもとに画一化される。何を見ても同じ感情しか抱かないなんて狂っている。おまえの愛は、暴力だ」
「……人間すべてを支配の対象として画一化してる張本人に言われたくないよ」
 肩を竦めてジョナサンが反駁する。
「わざと大袈裟な表現を使わないでくれ。ぼくは普通の男だ。その証拠に、エリナはぼくの愛に潰されたりしていない」
「あの女も鋼鉄製だからな。強すぎて正しすぎて美しすぎる愛を口に押しこまれても、平気な顔でそれを飲み下せる頑丈な女だ」
 つい、DIOは路面に視線を落とした。ひと月の降水量が10mmにすら満たないこの都市に、そうそう泥水の古溜まりはできない。気取られる前に素早く視線を戻す。人をやめ妖魅と化し、生血を啜り悪虐を尽くす化け物には不要な記憶だ。
「……強く正しく美しい愛をもてはやす奴らは、それが飲みこめず、消化できず、苦痛のうちに吐き出してしまう者がいるなど考えもしない。吐いてしまった者を見て、なんという狭量さだと蔑む。夕闇や夜を歩く性質に生まれついた者にさえ、いじけずに陽光の下を歩けと強要する。人が人であればやむを得ないはずの弱さや自己愛、それらをうっかり覗かせてしまった者たちを責め、高い位置からあげつらい、素晴らしい自分たちを見習えと脅すのが、強くて正しいおまえたちの娯楽――いや、大事な義務だからなァ」
「勝手に決めつけるな、ディオ」
 厳格な精神が裏づける重々しさでゆっくりとジョナサンが言う。
「沈みゆく船でエリナはぼくと死ぬと言い、ぼくは人倫のために拒んだ。きみも聞いただろう、彼女はぼくの頼みを『残酷な勇気』と呼んだ。つらい選択を頼んだけれど、彼女は痛みに耐えて応じてくれた。勇気とは生まれつきこころが強いことではない、それは単なる幸運だ。本当の勇気とは、己の弱さを噛みしめ、痛みを知ってなお立ち向かう意志だ」
 誇り高い主張を聞かされた仇敵は、くく、と喉の奥で嘲りを鳴らした。雑然とした街にあって高潔さを失わない横顔を盗み見ると、背筋がぞくぞくと下卑た悦びに震える。ああジョジョ、ジョジョ、実におまえらしい反吐の出そうな言い草だ。
 相手の見識が不完全である事実が、DIOに余裕をもたせていた。ジョジョは結局、痛みから逃げるのも選択肢だという価値観を許容していない。苦痛をしりぞけ安心感を求めてなぜ悪い? 自分を殴る親の愛を錯覚したいあまりに人を刺して献上金を稼ぐ餓鬼にも同じ台詞を言えれば上出来だ。ジョジョにも自覚はあるかもしれないが、であれば尚更、あえて指摘しないという優越感にこちらは立てる。依然揺るぎはしない。
「わたしを忌々しいと思うなら、何処へなりとも去れよ、幽霊殿」
 道化たそぶりでひらひらと大きな手を振る。
「殺せもしない相手をただ眺めていても腹立たしかろう。あるのかどうかは知らんが、天上の国とやらで妻子と平凡退屈に過ごすなり、ジョースター・エジプトツアー御一行の顔を見にいくなり、勝手にすればどうだ」
「ぼくもそう思ってる。何をだらだら話しこんじゃってるんだろ」
「会話を懐かしんでいるのなら寂しいことだな、ジョナサン・ジョースター。幼少期に植えつけてやった心的外傷のせいで天国で友人が作れないとみえる」
 挑発を投げてみたが、義兄は乗ってこなかった。
 ジョナサンは黙し、片手を顎にあてて思案顔を作りながら歩いている。癖のある黒髪がふちどる精悍な横顔に、DIOはふと既視感を抱き、それが『地獄の門』の頂に座する著名な彫刻へのものだと思い出した。
「……先程きみに指摘されたように、ぼくは独善的で、押しつけがましい部分が……あるのかもしれない。己の正義感と、それを為す力とに自惚れる部分が。まったく自覚がないわけでもなかった。でも、それで近しい人たちを救えるなら、あえて自分勝手を貫こうとも決めていた。けれど」
 どこか諦観した笑みでジョナサンが小さく首肯する。
「自分勝手を貫きたいのに、自分が何を考えているのか解らない。だから、ぼくはここにいるしかないんだろう」
「意味が取れん。ひとりで納得するな、説明しろ」
「……ぼくは家族を愛した。家族と仲間と師を愛した。彼らの恨みを晴らすためにきみを殺した。それなのに、ぼくの青春はきみとの青春だ。いったいこれは何事だ?」
 穏やかな声にはひとつの陰も感じられない。
 だがDIOは、相手の口調にうっすらとした粘り気を感じとる。何に対しての?
「冗談でもなんでもない。ぼくはきみを殺してやりたい。ぼくの少年時代はきみに踏み躙られ、傷つけられ、孤独と劣等感でぼろぼろだった。なのに、その傷や痛みそのものがぼくの青春になってしまっている。この矛盾はなんだ?」
 恬淡を装った声に隠れているのは、普通に考えれば怨嗟だ、それなら歓迎する。
 だが違和感があった。あるいはこれは、葛藤? でも何に対しての?
「……生きながら焼却炉で焼かれる苦痛を思え。眼をかけた息子に毒を盛られる落胆を思え。淑女の貞淑さを汚される屈辱を思え。あの日きみの城館で、波紋に溶けながら墜落してゆくきみを見下ろして、そう勝鬨をあげてやるつもりだった。でもできなかった。代わりに出てきたのは、」
「黙れ」
 衝動的に言葉を遮る。ジョナサンは一瞬だけ口を噤んだが、すぐに開いた。
「……罪悪感からじゃあない。良心の呵責でもない。きみはそういう感傷を抱くに値しない相手だと解っていた。なのに立ち竦むぼくは、」
「黙れ」
「朦朧ときみの名を呼んで、」
「黙れ!!!!」
 至近距離から亡霊を睨めつけて悪鬼が吼えた。
 大音声にびりびりと空気が震える。琥珀の瞳が滴るような紅を帯び、見るものを憤怒の温度で灼き焦がす。舐めるな、憐れむな、反吐の出そうな欺瞞にわたしを組みこむな! わたしとの闘争までも美しい名で画一化するな!!
 ジョナサンは口こそ閉じたが、気圧されぬ態度で素早く周囲に視線を走らせた。騒ぎに気づいた住民が窓を開けるのを危惧したのだが、もとより寂れた裏通りは、いよいよ廃墟に近い界隈に差しかかっていたらしい。猫の仔ひとり出てはこない。
 翠緑の瞳が正面を向き、狂怒する獅子のごとくぎりぎり牙を鳴らす吸血鬼にじっとその色を注いだ。やさしく囁きかける。
「……そうだねディオ、認めよう。ぼくは少しおかしい。でもぼくだって、泣きたくなんかなかった」
 吐息があれば触れあうほど、ふたつの顔は近づいていたが、ややあって離れた。
 獰猛な形相でDIOは踵を返して大股に歩きだす。置き去りにする勢いの速足だが、あまり意味はなかった。なにしろ同じ歩幅だ。
「自分が何を考えていたのか解らない。いっそきみに教えてもらいたいよ」
「……では教えてやろう。さっき言ったとおりだ。単なる独善だ。おまえの思考はすべてが自己中心的だ。自分のために泣いただけだ」
 凍てつく低音でDIOが答える。そうだった、こいつは幻覚、妄想の類いなのだ。まともに話を聞く必要などない。あしらえばいい。
「紳士たる自分が義理とはいえ兄弟を殺めた事実に泣いた。覚悟していたとはいえ、慈悲深さや寛大さには遠い蛮行に走ったことに泣いた。自分の粗暴さを思い知らされて泣いた。自己嫌悪だ。自己憐憫だ。わたしに対する情動ではない。自分のために泣いたにすぎない」
「自分のためね。うん、じゃあ、そうだとして」
 半身の声は痛みに耐えるような響きで耳朶を打つ。
「――――ぼくたちが、ふたりでひとりだと言ったのは、誰だ」
 耳を貸すな、真に受けるな、取り合うな。
 己を護る呪詛をDIOは心中で唱える。夜の夢が何を言ったところで、醒めれば消えるまやかしだ。
「……何をだらだら話しこんでいるんだろう、なんて言ってみたけど、本当は解っている。ぼくは自分に罰を与えるためにここにいる。涙を流した自分が許せず、きみに屠られた多くの生命に顔向けができず、己の甘さを断ち切るべくここにいる。自分を罰するつもりできみの隣にいる。でもすぐ気がついた。それは間違いだった――」
 続きを言いきれず口籠り、ジョナサンは天を仰ぐ。ああ、なぜ、こんな夜にかぎって星が綺麗なんだろう。
 きみに逢うことが、なぜ罰になると思ったんだろう。
 あのころのように肩を並べ、語らいながら歩くことが、なぜ罰になると思ったんだろう。

 DIOは応えなかった。無言でかつかつと靴を鳴らす。ひとり分の靴音、ここにはわたし以外は誰もいない。祖国に比べればぬるい寒気、干からびた匂いが散る砂埃の廃墟。誰もいないのに返事をする義理はない。
「……わたしは」
 どこからの声だ、と一瞬驚く。自分の口から出ていることが信じ難かった。
「……夜道を歩いていて、振り向いたらおまえが笑っていたものだから、偽物の星の話をして失望させてやろうとした。しかし無駄だった。わたしが何を投げつけても、おまえはそこに意味と意志を見出す。いつもそうだ。おまえは――」
 自分の思考が掴まえきれず、DIOは口籠る。わたしの前で微笑むな、喜ぶな、あの7年を美しい名で呼ぶな。地を舐めろ、泥を這え、わたしのところまで堕ちてこい!
 この男はいったい何者なのだ。DIOはふいに恐怖に似た感覚をおぼえる。ジョジョ、おまえは誰だ。どこからきてどこへゆくなにものだ。総てがおまえで始まりおまえで終わる。祝福されて呪われる。救済されて破滅する。おまえは黒であり白であり、質問であり解答だ。追えど届かぬ彼方を歩いているくせに、絶えずつきまとう背後の声だ。
 100年の海底で、もう憶えていない何かを必死に祈っていたことを唐突に思い出した。饐えた血臭が満ちる棺の中で、鉄格子の向こうの星だけが清浄だった。あまりに根源的すぎてわからなかった。誰かから奪ったもので自分を満たしてしまうのは、その誰かにすべてを奪われているのと同義だ。いまはっきりと恐怖した。わたしのすべてがおまえだなんて。そのおまえがもう死んでいるだなんて。

「……ディオ、ひとつ聞きたい」
 躊躇いがちに話しかけられる。我に返ったDIOは、いつのまにか自分が立ち止まっていることに気がついた。顔を上げれば少し先では、触れれば折れそうなほど朽ちた街灯がきれぎれの光で喘いでいる。
「きみはどうして、カイロを自分の本拠地に選んだの? 確か生前に訪れたこともなければ、行ってみたいという話を聞いた憶えもないけど」
 DIOはゆっくりと顔を回して義兄の顔を見つめた。真実を告白してやろうか、という誘惑が胸中で手招く。おまえが行きたがっていたからだ。おまえが望み、ついに到達できなかった地に立って見返してやりたかった。そして当然、おまえが行ける場所にはわたしも行ってやらねば気が済まない――天上の国があるならそこも。
「気まぐれだ。確たる理由はない」
「ふうん。ぼくはてっきりエジプトにある民間伝承を知ってのことかと思った」
 問わず語りにジョナサンは続ける。
「夜を歩き人血を啜る怪物のフォークロアは各地に類型が存在する。不死の体質や無双の膂力がよく語られるけど、この国にはまた独特の逸話が残っている」
 得意分野について話すときの癖で太い腕が広げられた。よく知っている腕だ、かつて羨望の対象として。現在は我が永遠として。
「エジプトの伝承の吸血怪物は、生者の血を吸うのみならず、死霊に自分の血を与えて回ったりもするそうだ。怪物の血を吸った霊は実体を得て、ほんのひととき現世に立ち返る。死者がこの世を歩く日が1日増えるたび、彼岸の住人である怪物も少しづつ力を得るとされる」
「そいつは素敵な、愚にもつかないお伽話だな」
「はは、種明かしをすれば、古代の神官が『怪物に死者を穢されぬよう正しく弔うべし』と人々を脅すときの口上なんだけどね。これなるが怪物の血だ、墓にふりまけば死者が歩き出すぞ、などとして壺に入れた獣の血を見せたりもしたらしい。というわけで、どう? ぼくに血を吸われてみない?」
「つまらん遊びに付き合う暇はない」
 淀みなく平静に言い返したつもりだった。そしてジョナサンが苦笑いして舌を出すのを待つつもりだった。
 だがその瞬間は訪れなかった。場に沈黙が落ちた。
「……並んで路地を歩きながら薄々と感じていた。俄かには認めがたくて、素知らぬふりをした。きみに肉体が使役されている影響に違いない、やりすごそうと思った。でも、いずれにせよ、もしぼくが今」
 自分をまっすぐ射る瞳の圧力が重い。受け流そうとして失敗したDIOは眼を伏せる。
「…………きみに吸血欲求をおぼえていたらどうする」

 積もりゆく静寂が息苦しさを増す。頭髪よりは濃い色をした睫毛が、あえかに震えているのをジョナサンは確認した。完全に感情を殺した彫像が唇をひらいた。
「嘘をつくな」
「きみを吸血したら、ぼくはほんのひととき甦り、きみは力を得るかもしれない」
「嘘をつくな。おまえは甦りたいなどと思わない。そんな男ではない」
「どうしてきみがぼくの思考を代弁できるのさ」
 困ったように下がる目尻がうすく細まる。
「永らえなくてもいい。1日だけ死の虚無から解放されたい。実体をもってぼくの子孫たちに触れたい。そのためにお伽話に賭けてもいい。そう考えているとしたら?」
 突然、DIOが身を振りかぶり、ドレスシャツを纏った厚い胸に拳打を叩きこんだ。
 衝撃はない、打突音すらしない。ただ立体映像どうしが交差するように、肘のあたりまでが胴体に埋まる。
「嘘をつくな。見たとおりだ。われわれは互いに触れられもしない」
 間近に迫った琥珀色の奥底を見透かしつつジョナサンが答えた。
「恐らくひとつだけ触れられる場所がある。ぼくときみのつながりを示す場所だ。小さいけれど、1本だけでも歯を立てて吸血するには十分な面積がある」
 どこだ、と眼で問うDIOの前で、腕を回して左肩の後ろに触れてみせる。
「考古・民俗学をやっていたぼくには当然の知識だし、有名な話だからきみも聞いたことくらいあるだろう。――生まれながらの位置や形状で吉凶を占う文化があるように、『痣』はしばしば呪術的な意味をもつ」
 金色の頭がゆるゆると後ろに退がり、腕を引いたDIOが姿勢を戻した。行動の激しさとはうらはらに無彩色の表情は変わらない。
「嘘をつくな」
 頑固に同じことばを繰り返す。ジョナサンはそっとひとこと誘った。
「試してみるかい」
 長く長く時間が経った。あまりに長すぎて、このままでは夜が明ける気すらしてきて、何か声をかけるべきかと考え始めた矢先、ざり、と砂を蹴ってDIOが背後を向いた。
 そのまま動かない。了承の合図らしいと察し、ジョナサンは促す。
「……上着をとって、ディオ」
 速くも遅くもない衣擦れの音とともに、背中の大きく開いたインナーがあらわれた。剥きだしになった肩のひとつ星が見るものを照らす。均整のとれた体躯は流れるような稜線を描き、筋骨の隆起が淡い陰影をおとす。熱をもたない肌は幽鬼の白さだ。夜の底にあって雪花石膏のように。
 知らずと息をつめている自分にジョナサンは気づく。

 これは自分の肉体だ。人ならぬものに侵食され組成すら変わったが、自分のものだった肉体だ。自分自身の背中をじっくり観察できる機会はほとんどなく、だから既視感はない。もはや他人のようにも思え、だが事実としては他人ではない。

 いま、かれを、うつくしいとおもったら。
 それは自己愛なのだろうか。


 触れようとして、ジョナサンは迷い、だが最終的には、迷いではない理由で手を下ろした。
 名状しがたい衝動が唇を割って出てきそうになる。言ってはいけないそれを抑えこみ、引き結んだ唇の端から小さな笑いだけを漏らして衝動を逃がす。ふ、ふ、と低く鳴る音は、もしかしたら別の音に聴こえたかもしれない。
「…………嘘だよ。ごめんね」
 静かに、できるだけ静かにジョナサンは言った。
「ぜんぶ嘘だ。エジプトにそんな伝承はない。ぼくに吸血欲求もない。きみにはあまりに多くの嘘をつかれたから、ひとつくらい嘘をついてやりたかった」
「死ね」
 DIOが呟いた。切実すぎてまるで祈りのような響きだった。
「残念、もう死んでる」
 微笑んで言い返す。微笑むくらいしか表情の選択の余地がなかった。背中を向けているかれにはどうせ見えないけれど。
「肉体がまだぼくのものならどうだったかな。肉体が残ってて仮死状態で、すぐ輸血していれば、それは単なる医療行為か。でもぼくにはもう遅すぎる」
「死ね」
 祈りが繰り返された。とても正直な要求だった。これを聞きたかっただけなんだ、とジョナサンは瞳を閉じる。
 7年間ずっと隣にあった声は、不実なつくり声で、薄っぺらな猫撫で声で、しかしとにかくそれを聞いて過ごした。長すぎた歳月は奇妙にも、うわべの友誼の苦痛ではなく、いつかその表層を暴きたいという執着を育てていた。暴くことと暴かれることに密かなよろこびを飼っていた。
「ぼくは聖人君子じゃあないから、生への未練はたぶんある。でもそれとは別に、死もまたぼくの結果でありぼくの一部分だ。死にたかったわけではないけど、自分自身の選択も否定したくない。だから……いや、ただ、思い残すことがあるとしたら」
 静謐な声は白い背中にだんだんと迫り、触れそうなほど近くでふと止んだ。
 星に、歯を、立てようとしているのだろうか。DIOはじっと感覚を追う。わからない、知覚できない。左肩の後ろに意識を集中する。痛みもなければ触覚もない。人外の鋭敏さをもっても何も知覚できない。でも人外の鋭敏さは逆にひとつの気配を察知する。なにかが減力していく気配だ。消える。去る。喪われる。現実世界が忍び寄る。この世の摂理に正されて、虚無は虚無へと還元する。おまえがここからいなくなる――時よ、止まれ、DIOは願った、時よ止まれ、停止しろ!! そのあとで、自分には事実その能力があることを思い出した。
 でももう遅すぎた。100年も昔から、とっくに遅すぎた。
「…………きみを、殺してあげたかった」


 闇に囁くまたたきがわずかに西に傾き、幾度目かの寒風がからからと空き缶を追って吹き抜けたころ、佇んでいた孤影はやっと後ろを振り返った。
 誰もいない路地に向かって平坦に言葉を投げる。
「見ろ」
 情動なき表情は変わらない。あるいは変えることができないのだとしても。
「やはり、おまえのほうが夢だったんだ」






 くるるる、と猛禽があげる甘えた声を門扉のあたりに聞きつけて、テレンス・T・ダービーは椅子から腰を浮かした。
 彼は長らく、鳥はすべて夜目がきかないものと信じていた。だがこの館に仕えはじめ、門番がわりの隼が夜更けに帰宅する主人に親愛の挨拶をするのを聞き、その認識が誤った俗説であるのを知った。なんでも鶏やごく一部の種類が夜盲であるにすぎず、大半の鳥は暗いところでも見えているらしい。
 燭台を持って向かい、白大理石のエントランスホールに立つ主人に一礼する。背後に回って上着を受け取り、無礼にならない仕草で汚れを確認する。血の汚れや匂いが漂うときは、主人が外で食事を済ませてきたときだ。もし汚れていたら早急にひきとって洗い清めるのが自分の仕事になる。
「おや」
 意外なところに意外なものを見つけて、執事の口から疑問が漏れる。
「どうした」
 テレンスは応えようとしたが、次の一瞬、返答に窮した。見たはずのものがそこにない。
「いえ……申し訳ありません、見間違いでした。お召し物には何も付いていないのですが、DIO様のお身体に血が付いてらっしゃるように見えたもので」
「どこにだ」
「左肩の後ろの、痣の上です」
 暫しの沈黙があった。不自然な静けさにテレンスは当惑する。肩の後ろなど、そう簡単に食事の汚れが跳ねる場所ではない。そもそも本当は何もない。言い出したのは自分だが、そんな事実はないと即座に否定してくれれば、失礼致しましたと引き下がるだけのやりとりなのだが。
「わたくしの見間違いですので、実際には何もございませんが……もしやお怪我をされた憶えがございますか? または痛みなどは?」
「どうだったかな」
 先程の沈黙よりは短い間でDIOが答えた。
「痛みは……いや、仮に痛んだとしてもいわゆる幻影痛だ。ほんものの傷ではない。血が見えたとしてもそれは」
 ゆらりと歩き出す大柄な背は、それ以上の質問を拒んでいた。
「幻影の血だ」
 館の主人がホールを去ってゆく。どうなさるのだろう、どこに向かわれるのだろう、とテレンスは茫漠とした疑問を抱いた。本当は知っている、これから高楼の寝室に上り、夜明けとともに就寝なさるにすぎない。それは解っているのだが、なぜかテレンスは落ち着かない気分を抱いて暗紫の帳に自ら包まれにゆく主を見送った。あなたはいったい、どの夜を歩いているのですか、と。





暗黒の日でも星がみえる
2015/06/15

pixivのほうでぼす様からイラストをいただきました。ありがとうございます!