オークス家にとって5人目になる女児が生まれたその日、父は諦めて、
 当時7歳だった長女の私を聖騎士に育てると決めたらしい。

 前例が無いことではない。国が荒れている今、剣を振るう女戦士は珍しくもない。それでもやはり、王家直属の聖騎士家の後嗣ともなればできれば男子が望ましいと家族はみな考えていたようだ。
 だが神の如何な思し召しか、我が家はひとりの男児にも恵まれなかった。晩婚だった父にはすでに老いの兆しが見えていた。このままでは自分の跡取りの叙任式も見ぬまま天に召されてしまう。それは耐えがたかっただろう。
 父は必然の選択をしたと、私も考えている。

 母や妹たちは気の毒がったが、私に不満はなかった。
 というより、自分が幸なのか不幸なのか、それを見抜こうにも比較する対象がなかった。腕力で劣る身で武人たるにはどうすべきか悩んだことはある。だが父は私に、「女を棄てろ」などとは一言も言わなかった。
 そんな精神論に意味はない。女を棄てて自己満足を得れば男になれるか?
 無理な話だ。生まれ持った肉体はどうしようもない。
 それよりもあるがままの自分を受け入れろ。自分の得手と不得手を見定めて、わずかでも最善に近い策を採れ。男とて同じことだ、戦場ではそれが出来ない者から死んでゆく。私はそう教わった。
 今の私が、少しでも剣士として名が知られているとしたら、この教えの賜物だ。
 だから私はいつも素直に自分を出していたし、父はそれを認めたうえで私を鍛えた。髪は長く伸ばし、誕生日にはドレスも作ってもらった。むろん髪は稽古のとき結んでいなければ怒られたし、ドレスよりも遙かに多く武具のほうを作ってもらったが。
 ……でも、そんなことよりも、

「淑女と生まれて、ああも陽にお焼けになって、まだお外を歩けるなんて勇気ある方!」
「仕立て屋のミスかしら? ドレスのお肩がぎっちりと窮屈そうなのは」
「なんと凛々しいお方でしょう!……野蛮と紙一重でね」

「大したもんだよ。ああも恥を捨てられることが、な」
「あんなもの女の癇癪さ。俺達が負けたところで不名誉じゃない」
「黙って座ってりゃいいのにな。綺麗な顔、歪ませて、あさましいにも程がある」

 偏見、嫉視、中傷? 名前などどうでもいい。
 とにかく宮中や詰め所で、望まずとも流れついてくるこれらの囁きが……嫌というほど私の性別を教えてくれた。



「からかっているのなら、もう気は済んだろう、行ってくれ」
 アグリアスは眉一つ動かさず、剣を磨く手を休めずに言った。いくらか開けた林の中、天幕を張った野営地でのことだ。
「……いや、まだからかい足りねえな」
 陰険にとぼけた口調でガフガリオンが返す。焚火のゆらめきを反射する剣から眼を離し、アグリアスは相手に侮蔑をこめた視線を送った。
「貴君は豪胆な精神の持ち主だな。こんな野営の最中も、人をからかい悪ふざけをして遊ぶ余裕があるらしい。私は貴君ほど大成していないのでお願いするが、どうか持ち場に戻って見張りを続けていただきたい。貴君の勇猛は別の機会に試される」
 嫌味たっぷりに言い切ったが、相手は乗ってこなかった。
 数十分前、ガフガリオンにたたき起こされて強制的に見張りを交代させられた不幸なラッドのことを彼女は知るよしもない。
「どうせ俺が何してたって悪ふざけに見えるンだろ、お前には」
「違うとでもいうのか」
「親の葬式で泣いてみせても、そう思われるンだろうなあ」
 そう言って壮年の剣士は小枝を火に投げ込む。根が真面目なアグリアスは、たとえ話の深刻さに思わず当惑した。
 自分は戦果の上でしかこの男の過去を知らない。個人的な過去は、何も知らない。
 どう反応すべきか困っている間に、男が先に口を開いた。
「もっとも、俺が親父の訃報を聞いたのは、前線帰りに家よりも先に寄ったなじみの娼館でだったけどな」
「……貴様の持ち場に戻れ」
 牙をむく狼の凄みでアグリアスは命令した。にわかに殺気立つ彼女に、ガフガリオンは首をすくめて何か言い返そうとする。
 だがそれよりも早く、背後から聞こえた別の声が雰囲気を中和した。
「火の番……交代しようか?」
 人なつこい笑顔だが、少し困った色が隠しきれず滲み出ている。
「なンだ、ラムザ、まだ寝てなかったのか」
 火のそばに近づいて腰をおろす若者に、ガフガリオンが声をかける。その口調には微妙な圧力が込められている気がしたが、アグリアスにはよく解らない。
「ガフガリオンだって起きてるじゃない。ずっと話しこんでたの?」
「私は剣を磨いていただけだ。こいつが勝手に来た」
「盗み聞きしてたのか? 趣味の悪いヤツだ」
 否定の言葉を無視してガフガリオンがにやにやと返す。
「そんなつもりはないよ。ただ、話こんでる2人の会話の声が聞こえてきて、つい目が覚めちゃったんだよ」
「周囲がどんなに喧しくても平気で眠れるようになれ。身体が保たンぞ」
 恩着せがましく説教を垂れつつ、歴戦の傭兵は立ち上がってわざとらしく肩を回した。ごきごきと関節が鳴る。
「まあ、騎士殿の話相手の代わりも来たことだし、これで俺もやっと見張りに戻れるな!」
「ご厚意痛みいる。親切心からの行動だとはまったく気づかなかった」
 背中にぶつけられた嫌味もどこ吹く風で、ガフガリオンは振り向きもしないまま薄闇の木立の中へと歩き去る。無視されたアグリアスのほうが不愉快そうに顔を歪め、男の去った方向を睨みつけた。
「……さて。今回はなにがあったの?」
 少年の控えめな問いかけに、アグリアスは我に返る。向けられているのは真摯な視線、好奇心からではなく思いやる口調。
 傭兵たちの隊長はガフガリオンだが、若いメンバーを精神的な意味で実質的に纏めているのは他でもないラムザだ。素直な気遣いにアグリアスは感謝した。
「いや、たいした事ではない。気を遣わせてすまないな」
「毎度のことだからこっちも慣れっこだけどさ……」
 ラムザは諦めたように苦笑した。ガフガリオンとアグリアス、対極の価値観にある2人の対立は今に始まったことではない。
「ガフガリオンの言うことを、いちいち真面目に受けとる必要はないと思うよ。彼はああいう人だからさ、お互いのためにもね?」
 軽口のつもりでそう言った。ラムザ自身、両方の個性を尊重してはいたが、共感できるのはアグリアスのほうだ。
 自分の言葉に、彼女の瞳が少し、揺れたことには気づかなかった。
「……そうだな。真に受けないほうがいい」
「何を言われたの?」
「いや、別に……」
 視線を逸らして言葉を濁すその態度を、忌々しさによるものと受け取ったのだろう。さあ、あとは任せてもう寝なよとラムザは彼女を天幕の中に押しこめる。
 わずかな物音に寝返りを打つアリシアの隣に座って、アグリアスはこっそり溜息をつく。そうだ、誰かに言うことではない。とてもではないが言えることではない。
 からかわれたにせよ、あんな男にあんなことを言われたとは。



――『実際、いい女だよ、おまえは』






「……そりゃあ、けっこういい人だったから、好きになってもよかったのよ?」
「……言ったわねえ、この贅沢もの!」
 少女たちの声が小鳥のようにさざめき、足下の緑をゆらゆらとくすぐる。
 甲高いさえずりがときに微笑ましく、ときに騒がしいのも、まあ小鳥と同じだろう。
 彼女らは元々ラムザとパーティを組んでいた構成員であるらしい。傭兵として今回の護衛役を引き受け、アグリアスと同行している。だが、彼女らのこれまでの仕事の経緯を、アグリアスはまったく知らされていなかった。
 ラムザともどもどこの出身か? どこを拠点に活動していたか? ガフガリオンの下についた経緯は? 今までどんな仕事をしてきた? 屈託のない彼女たちが、そういう話題になるとなぜか口が重くなる。不要なことまで詮索する気は無いが、やんごとなき方の護衛の任だ。何かあるなら知らせて貰わねば困るし、何もないなら隠す必要もないはずだ。
 では、何故、過去のことを話してもらえない?
 ……要するに、やはり自分は敬遠されているのだろうかと、アグリアスはさざめきを聞き流しながらおぼつかなく考えた。
 他人が見る自分のイメージは十分解っている。その気風は変えようがないし、それを恨む気もない。だが自分が、属しているはずの性に迎えられていないとしたら、やはり落ち着かないものがある。
 しかし、自分はあのように彼女らと恋愛談義をしたいだろうか?
 アグリアスは苦笑した。したいわけでもないくせに、仲間に入れてくれないと文句をいうのは我侭だ。孤高の気楽と集団の安楽、両方とも欲しがるのは虫が良すぎる。
「……うるさいぞ、女ども。気ィ入れて歩け。今日中にこの平原を越えなきゃならン」
 しんがりを行くガフガリオンが声をかけた。どこか投げやりだ。
「何よ。盗み聞きしないでよ、女の子の話を」
「遅れてもないし気を抜いてもないじゃない。どこ見てんの」
 間髪入れずの反撃に彼は絶句し、口の中だけでぶつぶつ文句を垂れた。こういうタイプは意外と苦手らしい。
「2人とも僕なんかよりたくましいからね。おしゃべりくらいじゃへばらないよ」
 軽くからかう調子でラムザが言った。何よそれ、などと言いながら少女たちは、こちらには気を悪くしたふうもない。便乗したようでいて実は気を遣っているラムザの真意に、彼女たちは気付いているのか。
 ……いや、気付いているからこそ気付かないふりをして、これ以上は空気が険悪にならないよう引き下がって場を収めたのか。
 ……だとしたらやはり、何事も正面からしか相手にできず、結局は喧嘩に持ちこんでしまう自分のほうが、よほど迷惑な存在ではないか……

「ま、人間、向き不向きがあらァな」
 真横を通り過ぎた声にアグリアスは我に返る。
 見ると、ガフガリオンの広い背が自分を追い越していくところだった。考えながら進むうちにいつのまにか歩みが遅れたのだ。
 暫しののち、掛けられた言葉を理解して、アグリアスは激しく後悔した。奥歯をぎりと噛みしめて下を向く。私はいま、そこまで感情を顔に出していたのか? そこまで物欲しげな顔をしていたのか?
 いや、そもそも奴の言葉は私の態度のどの部分にかかっているのだ?
 もしかしたら、奴がわざわざ彼女たちのおしゃべりを注意した、その理由は、……

 罪もない草を踏みつけ、アグリアスは不機嫌そのものの表情で行軍を再開した。苛立ちと悔しさに顔がただ火照り、激情に跳ねる心臓のせいで呼吸も荒い。
 だがそれらの感情は、ガフガリオンに対してのものではなかった。嫌な相手だが気を遣ってもらったのは事実だ。
 恐らくもっとも純粋な意味で、彼女は自分を許せなかった。
 不気味なほど黙りこくって、残りの旅程をこなすアグリアスの耳に、小鳥たちのさざめきは無邪気につきまとい続けた。



――『好きになっても、よかった、けどね』






 アグリアスは、巨大な薪の束を前にして困りはてていた。
 後悔していないと言うと嘘になる。
 森林地帯で迎えた今日の戦闘は苦しく、戦死者こそ出なかったが、みな疲労困憊してうずくまってしまった。いくらか元気だった自分が力仕事である薪拾いを申し出るのは当然だ。それはいい。
だがいくらなんでも、普段は2〜3人で担当しているものを1人でできると断言してしまうのは軽率だったかも知れない。
 調理に使う分に暖を取る分、不寝番が灯りとして使う分。丸一晩分の薪ともなるとかなりの量になる。苦労して担ぎ上げたが、1人では重心が安定しないのでとても運びにくい。それでも歯を食いしばり、野営地めざして斜面をだいぶ登ったが、やがて背骨がみしみし悲鳴をあげはじめる。身体を壊してしまっては逆に迷惑だ。いったん休憩せざるを得なくなった。
 二回にわけて運ぼうかとも考えたが、ここまで登った惜しさがある。
 溜息をつき、彼女はもう一度、汗まみれの身体に鞭打って大きな束に手をかけた。
「……お疲れだな」
 背後から突然かけられた声に、アグリアスは振り向かなかった。
 気配を読み取れなかった悔しさを隠してのことだが。
「……何の用だ。今夜の材料はどうした?」
「心配すンな、もうあいつらに届けてある」
 食材を狩ってくる担当だったガフガリオンは、そう言ってがさがさと茂みをわけてアグリアスに歩み寄った。薪の山に視線を落とし、ここまで運んできたことに感心の口笛を吹く。
「だから言っただろうが。1人で運ぼうなンざ無茶だ」
「ここまで登ったんだ。あと少し、なんとかなる」
「強情もンが」
 ガフガリオンの口調は、なぜか少し愉しそうだった。
「もっと楽に運ぶ方法はいくらでもある。教えてやろうか?」
「お聞かせ願おうか」
 嫌味で切り返してやるつもりでアグリアスは言った。いつもの下らぬやりとりだ。心を武装して返事を待つ。
「オレを頼れ」
 相手の発言の意味をすぐにはとらえかね、用意していた思いつく限りの皮肉は、空回りして消えた。
 思わず振り向く。そうしてから、振り向くのではなかったと後悔した。
 ガフガリオンが手を差し出して待っている。
「荷をよこせ」
 いつもと同じ、人を小馬鹿にしたようなそっけない態度で言う。絶句している自分とはうらはらに普段と変わらぬ態度だ。
 なぜか突然、腹が立った。
「断る!!」
「何なンだ、まったく」
 急に激昂した相手の態度にガフガリオンは舌打ちした。強引に手を伸ばし、薪の束を奪い取ろうとする。
「いいからよこせってンだ」
 アグリアスは束ねたロープを掴んで荷を引きずりよせようとしたが、相手もすでにロープを掴んでいた。
 手を離さない彼女を、荷ごとむりやり引き寄せる。どちらも譲らぬまま揉み合いになり、足場の悪い斜面によろけて、鎧を着けたままのお互いの肩ががつん、とぶつかる。
 思わず上げた視線が、至近距離からまともにかち合った。
「…………」
 アグリアスはその姿勢のまま、動けなくなった。
 目の前の男をどこか呆然と見る。
「……どうして欲しいンだ、お前さんは」
「……どうもするな」
 腕に力を込めたが、薪の束は動かない。
 戦闘中は別にして、男性の顔をこんなに間近に見るのは初めてだった。
「何を考えてンだ?」
 やっと視線を逸らしたが、自分にじっと向けられている相手の視線は感じる。虚勢を張り、搾り出すように気丈な声を出した。
「おまえには、頼りたくない。……頼れない」
「理由を聞かせろ」
 いざそう問われると、地味に言葉に詰まる。厚意から自分に協力しようという者を、いけ好かないという理由だけで絶つ気か?
 だが相手は答えを待っている。言わなければならない。
「…………おまえは、どうしようもない男だ。私は到底おまえを理解できない。だが……」
「だが?」
 アグリアスは必死に言葉を紡いだ。自分に言い聞かせるために。
「おまえにはおまえの美学がある。他人に対する余裕も、私などよりずっとある……」
「ほう」
 ガフガリオンは笑った。それは嫌味なものではない気がした。
「……そうと解っていても、私は、お前を受け入れられない」
 言いながらアグリアスは呼吸を整える。自分自身の心が少しづつ見え始めた。これ以上、卑怯者にはなれない。
「狭量と思われて構わない。正直に言う。私は、おまえの好意に感謝するよりも、おまえの好意に甘んじるのが腹立たしい気持ちのほうが……強いのだ」
 しばらく沈黙して、ガフガリオンは静かに言った。
「仕方ねェな。オレには信頼に足る身分がない」
「そうではない」
 即座にアグリアスは否定した。
「過去であるとか身分であるとか、そう言った問題ではない。もっと……もっと厄介な話だ。おまえは私が最初に考えていたほど、身勝手でも嫌な奴でもなかった。おまえは、最初に思っていたよりは、ずっと、」
「ずっと?」
「………………いい男だ」



――『けっこういい人だったから』
――『好きになってもよかったのよ』



「……でも、それだけの話だ」
 アグリアスはきっぱりと断言した。
「おまえを頼れば、たぶん楽なのだろう。しかしそんな自分を私は許せそうもない。それだけだ。完全に私の都合だ……」
 言いながらも、彼女は自覚していた。女になりきれぬくせに女をもてあます自分。
 その自分が囁いてくる。この男によって変わることの誘惑を。
 ――嘘をつけ。アグリアスは自嘲して胸中で笑った。誰よりも自分が可愛いだけのくせに。変わりたくなどないくせに。誰かを頼るのも、弱みを見せるのも御免だ。ただその自尊心が愛しいだけのくせに……
 ガフガリオンは再び沈黙した。
 笑われるのかと思ったが、そこにあるのは奇妙な表情だった。
「……降参だ。今日のところは、な」
 引っぱっていたロープを離すのと同時に、薪の重量がすべてアグリアスの腕にかかる。彼女は慌てて荷が斜面から転げ落ちないように保持した。
「こいつは、褒め言葉になるのかどうか解らンが」
 ガフガリオンは横を向き、なんとも言えない表情で頭を掻く。
「おまえみたいな女は、初めてだ」
「……珍しいか。死んだら剥製にでもしてくれ」
 意外に冷静に言い返せている自分に安心しながら、アグリアスは男に背中を向ける。
「そうだ、まだ教えてなかったな」
「何?」
「楽な運び方だ」
 あっという間にガフガリオンは、油断している背中から引きはがすように荷を奪った。
 振り向いて呆気にとられる彼女には眼もくれず、自分の背に担ぎなおす。そして悠々と山道を登りはじめる。
「何をする! 私は嫌だと言っただろう!」
「オレは、楽に運ぶ方法はいくらでもあると言ったンだ」
 涼しい顔をして男は答えた。
「ひとつは、了承を得てオレが運ぶ。もうひとつは、了承を得なくていいからオレが運ぶ」
 屁理屈だった。だが、それを指摘したところで聞き入れる相手ではない。
「……礼は言わん!」
「ああ遠慮しとく」
 軽やかに返されて、彼女は憤慨のあまり口もきけない。
 無駄に大きな音をたて、乱暴に茂みを漕ぐ音を後ろに聞きながら、壮年の傭兵はこっそりと口髭の下で笑った。小娘のお堅い依怙地を許してしまうとは、ガフガリオン様もヤキが回ったものだ。
 まあ、完全に勝負がついたわけではない。手応えが無かったわけでもない。
 なんなら、もう少し大人になるまで待ってやってもいい。
 ……同じ道を歩めるわけもない相手の、何を待とうとしているのか、オレ自身にも解らんが。

 ガフガリオンは口の中で呟いた。自分以外には聞こえない、常にはない穏やかな声で。



『実際、いい女すぎるンだな、おまえは』



Fin.










『けっこういい人だったから 好きになってもよかった けどね』  (C)筋少
SYMBIOSIS(シンビオシス)は共生の意。


2003/05/20